カテゴリー : 社会保険労務

年金記録:紙台帳1365万件、ずさん管理で照合困難

宙に浮いた年金記録の照合は、やはり困難なようです。

法律では、以下のように規定されており、このようなずさんな管理を容認するものとは到底思えません。

厚生年金保険法 第28条:

社会保険庁長官は、 被保険者に関する原簿を備え、これに被保険者の氏名、資格の取得及び喪失の年月日、標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額を言う。以下同じ。)その他厚生労働省令で定める事項を記録しなければならない。

厚生年金保健法施行規則89条:

法第28条に規定する厚生労働省令で定める事項は、次の通りとする。

  1. 被保険者の基礎年金番号
  2. 被保険者の生年月日及び住所
  3. 被保険者の種別及び基金の加入員であるかないかの区別
  4. 事業所の名称及び船舶所有者の氏名(船舶所有者が法人であるときは、名称とする。)
  5. 被保険者が基金の加入員であるときは、当該基金の名称
  6. 賞与の支払年月日
  7. 保険給付に関する事項

毎日.jpの記事は以下:

 5000万件の宙に浮いた年金記録のうち、今後解明が必要な1975万件の記録。コンピューター上で納付者の特定が困難なこれらの記録については、原簿との照合が最後の手段だ。ところが、業者に委託し埼玉県小川町の倉庫に保管している古い厚生年金記録1365万件の紙台帳は、1950年代の種別に分散されたまま保管され年金番号順に整理されていないなど、長年ずさんな管理の状態が続いている。10年までにコンピューター上の記録すべてを原簿と照合するという舛添要一厚生労働相の決意は、早くも揺らいでいる。

1365万件は、厚生年金制度が始まった1942年から記録が磁気テープ化される57年までの記録。紙台帳は59年に都道府県から社保庁に移管され、97年から小川町の倉庫内の約264平方メートルのスペースで、保管箱に保管されている。

衆院厚生労働委員会の議員が12月視察したところ、「箱の整理番号は欠番があり、隅に一度引き抜き戻さないで長年たっているものもあった」(保坂展人議員)という。57年時点の加入者918万件▽54〜57年に脱退した356万件など、50年代に仕分けした種別のまま保管しており、社保庁は正確な件数を把握していない。年金番号の末尾2けたが「50」の記録22万件は、社保庁が調査用に引き抜いたため別分類となっている。

06年以降、各地の社保事務所からの照会で業者がこの倉庫で紙台帳を探したが、2746件のうち半数の1373件が発見できず、一部が不明になっている可能性が高い。

社保庁は「それぞれの種別の中では番号順に並んでいる。しかし、数種類の箱を一つ一つ探さなければならない」と話している。倉庫では仕事納めの12月28日まで、全国30カ所の社会保険事務所職員が泊まりがけで、5000万件のうち氏名のない記録524万件の照合を進めた。

同委の茂木敏充委員長は「きちんと整理されているとは言い難い。ファイリングの基本方針を決め、管理台帳を作り直すことが必要」と指摘。社保庁は「ねんきん特別便の発送に伴う照合を最優先し、その後検討したい」と話している。

厚生年金基金の未請求問題

厚生年金基金で、基金の年金を受け取る権利があるのに受給請求をしていない人が13万7000人に上っているとのことです。ちょっと驚きです。

厚生年金基金とは、老齢厚生年金の一部を代行し、さらに老齢厚生年金の報酬比例部分を上回る独自の上乗せされた給付を行う法人です。老後において、加入員の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的としています。

なお、基金が支給する給付を受ける権利は、権利を有する者の「請求」に基づいて、基金が「裁定」します。 よって、基金の受給権を取得したにも関わらず、請求を怠ると年金が貰えません。

この「請求」という制度、国にとっては都合が良いのかもしれませんが、年金を貰えるか貰えないかはこの制度が続く限り、あくまで「自己責任」となってしまうのでしょう。

izaの記事

 代表的な企業年金の「厚生年金基金」で、基金の年金を受け取る権利があるのに受給請求をしていない人が13万7000人に上り、累計で966億円が未払いとなっていることが28日、厚生労働省の調査で分かった。

 大企業が各社でつくる基金と違い、中小企業が業界ごとに設けた「総合型」で未払いが多く、本人が受給権を知らずに請求していないとみられる。各基金が住所を把握できていない人も3万6000人に上っており、年金受給に関する通知が届いていない可能性が高い。

 厚生年金基金には、厚生年金の一部を国に代わって運用・給付する「代行部分」も含まれることから、国の監督責任も問われそうだ。

 厚労省は、解散や代行返上を予定している基金を除く621基金を対象に、今年3月末の状況を調べた。

 未払い分の平均年金額は20万3000円(年額)。半数は10万円未満だが、30万円以上の人も25%強いた。平均加入期間は8・4年。

 厚生年金基金の受給者は3月末現在、233万人で、年金受給額は8945億円(同)。

 転職などで同基金を脱退した人の年金資産は「企業年金連合会」に移るが、同連合会でも約124万人分、1554億円の未払いが既に判明している。

労災認定のむつかしさ

労働者災害認定を得るのは難しいようです

関連ニュース:

労災保険とは、仕事中のけがなどの業務災害について、事業主の補償義務を国が代行して、労働者の生活を補償する保険です。

ここでいう「業務災害」とは、業務上の労働者の負傷、疾病、障害または死亡です。
業務遂行性と業務起因性の二つの条件を満たした時に、業務災害と認定されます。

  • 業務遂行性

業務災害発生時に、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること

  • 業務起因性

業務災害が業務に起因して発生したものであること。

中央労働基準監督署の判断では、「業務にかかわる疾病ではない」ということのようですね。

記事によると、死亡前の半年間の時間外労働は、1カ月平均で約134時間とのこと。一ヶ月に20日働くと仮定すると、一日の時間外労働平均が6時間以上となります。尋常ではないですね。異国でこんな生活を続けていると、健康に良く無いことは容易に想像つきます。ただ、医学的な因果関係となると、証明するのがムツカシイのでしょうか…

また、最近の職場では、「鬱病」にかかる人が急増していると聞きます。業務のプレッシャーが理由で鬱病にかかる人は、労災って認められるのでしょうかね?

izaの記事

 時事通信社の政治部記者、森田一樹さん=当時(36)=が平成9年に亡くなったのは過重労働による過労死だったとして、父の一久さん(77)が28日、国に労災認定を求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状などによると、森田さんは政治部で首相官邸を担当していた9年6月1日に吐血。東京都内の病院に搬送されて入院したが、2日後に糖尿病の合併症により死亡した。森田さんは当時、ペルー大使館人質事件や首相外遊の取材に当たっていた。死亡前の半年間の時間外労働は、1カ月平均で約134時間に上っていた。
遺族は11年、中央労働基準監督署に「過重な業務により糖尿病が悪化して死亡した」と、過労死に当たるとして労災を申請。中央労基署は14年10月、森田さんの死因を「糖尿病の合併症」と認定したが、業務にかかわる疾病ではないとして労災を認めなかった。
原告側は「過重な労働が糖尿病を発症させ、死亡に至った」と主張している。

社会保険庁 保険料延滞金を不正減額

#社会保険制度に興味を持ちつつありますので、機会があれば、今後話題を取り上げていきます。

ただでさえ、社会保険制度の財政の均衡が危ぶまれているさなかに、このような記事です。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/112155/
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/112430/
「不正減額が判明したのは、28都道府県の社会保険事務局管内にある105社会保険事務所 」ということなので、組織的に行われている可能性が高いような気がします。

なお、厚生年金保健法(87条)や健康保険法(181条)にて、延滞金の記述があり、主旨は以下のようです。

「督促をしたにも関わらず、納付義務者が督促状の指定期限までに保険料を納付しない場合、保険者は、保険料額につき、年14.6%の割合で、納期限の翌日から保険料の完納(又は財産の差し押さえ)の日の前日までの日数によって計算した延滞金を徴収する。」

izaの記事(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/112155/)の記事:

 社会保険庁は26日、平成17、18年の2年間、全国の社会保険事務所が厚生年金や健康保険の保険料の滞納記録を改竄(かいざん)し、総額約10億8800万円の延滞金を不正に減額していたと発表した。保険料の徴収率アップのため、滞納者に保険料を支払ってもらう代わりに延滞金を不正に減額していた。さらに倒産した会社から集めた保険料を別の会社の保険料として不正に付け替えていたことや過払い医療費の通知漏れなども新たに発覚。社保庁は再調査を行い、関係職員を処分する方針だ。
不正減額が判明したのは、28都道府県の社会保険事務局管内にある105社会保険事務所。3337社の延滞金を減額しており、都道府県別の内訳は、福島が約3億3700万円(600社)でトップ。以下、三重が約2億7000万円(655社)、長野が約1億500万円(1210社)。
不正減額された延滞金約11億円のうち約7億6300万円は追加徴収が可能なため、社保庁は本来の延滞金の支払いを会社側に求めていくが、約3億2500万円は2年間の時効のため徴収不能になっている。
社保庁によると、事業所が保険料を滞納した場合、納付期限の翌日から延滞金が年率14・6%の割合で発生。保険料の強制徴収のために事業所の財産を差し押さえた場合は延滞金の計算が止まる。この仕組みを悪用し、(1)差し押さえの事実がないにもかかわらず、オンライン上で架空の差し押さえ処理をする(2)実際の差し押さえ日よりも前の日付でオンライン処理する-などの手口で延滞金を減額していた。
社保庁は、不正減額の理由について「滞納している事業所との納付交渉を有利に進めるため」などと説明。組織ぐるみの不正の疑いについては「個人的判断でやったことが広がっただけ」と否定した。ただ、17、18年の2年分しか調査しておらず、16年以前や19年にも同様の不正が多数あることも予想される。
一方、延滞金の調査過程で、16年4月から19年9月までの間、福島社会保険事務局管内にある全社会保険事務所で、保険料約7700万円の不適正な収納処理が行われていたことも発覚した。
具体的な手口は、不正な延滞金の減額処理で浮いた領収金を、別の会社の保険料として処理するなどしていた。こうした手口で集めた保険金は計約7700万円となる。
また、秋田社会保険事務局では、15-17年度にかけ、医療費の過払いを患者に通知していなかったが、「通知していた」と本庁に虚偽報告していたことも判明。社保庁が昨秋行った通知漏れ調査の際にも虚偽報告しており、2回もうその報告をしていた。未通知は82件に上るという。