カテゴリー : 歴史

保元・平治の乱について

保元・平治の乱を読みなおす」という本を読んだ。
読んだ感想は、私が高校時代に勉強したことと、最新の学説とはかなり隔たりがあるということです。また、先入観に基づかず、資料を元に学説を展開している点は素晴らしいと感じました。

保元・平治の乱に関して、以前は、摂関家内部の対立、藤原忠実の頼長に対する偏愛、平氏・源氏の武士の二極対立、平安貴族である藤原氏は武力に対しては源氏や平氏に頼るほか無かった、というような事を教えられました。

しかしながら、この本は、色々な資料から従来の学説を批判し、以下のような記述をしています。

  • 当時の平氏(伊勢平氏)と源氏(河内源氏)は必ずしも対等な地位ではなかった
  • 藤原忠通から藤原頼長への藤原氏長者の継承はあらかじめ定まっていたことであり、実子が生まれたため忠通がその約束を反故とした
  • 藤原信頼は、白面の公家ではなく、武家として合戦に臨んだ
  • 平治の乱の根本原因は、平氏と源氏の対立ではなく、院の近臣同士の対立であった
  • 後白河天皇は、いわば繋ぎの天皇であり、天皇としての資質が疑問視されていた
  • よって、平清盛は、一貫して後白河天皇(上皇)と距離をとって、二条天皇と親しかった

など、など、色々なことが分かってきます。
平安末期の2つの乱の最新学説を知りたい人にお勧めです。

また、この本の著者の元木泰雄氏は、「院政の展開と内乱」という本も執筆しています。こちらもお勧めです。

保元・平治の乱を読みなおす (NHKブックス)

日本の時代史 (7) 院政の展開と内乱

女帝の世紀

悠仁様がお生まれになってから、沈静化している女帝論争ですが、最近、「女帝の世紀」という本を興味深く読みました。

この本は、古代における女帝即位について、現存する資料から論考を加え、独自の女帝論を展開しています。

私にとっては、特に以下の観点が興味深いものでした。

  • 不改常典の新たな解釈
  • 「ミオヤ」、「ワガコ」という父母子関係から見た皇位継承
  • 聖武朝の壬申功臣からの決別からくる社会背景

愉しみながら読め、古代女帝論に一石を投じる本だと感じました。

蘇我氏内紛の現場?

実は、歴史好きです。

奈良県明日香村の石舞台古墳の近くで、7世紀前半の建物跡とみられる柱列が見つかったそうですね。馬子の息子の蘇我蝦夷と馬子の弟の境部臣摩理勢の争った後かもしれないとのこと。以下、産経新聞サイトの引用

飛鳥時代の大豪族・蘇我馬子(そがのうまこ)(生年不明―626年)の墓とされる石舞台古墳(奈良県明日香村、特別史跡)の隣接地で、7世紀前半の建物跡とみられる柱列が見つかり、奈良県立橿原考古学研究所が8日、発表した。

 石舞台の石室とほぼ同じ向きに並び、同研究所は「古墳を意識してつくっている。蘇我一族が常駐した現地事務所ではないか」としている。

 日本書紀によると、馬子没後の628年、蘇我一族は総力を挙げ墓を造営。周りに常駐していたが、推古天皇の後継をめぐり、息子蝦夷(えみし)と対立した叔父境部臣摩理勢(さかいべのおみまりせ)が小屋を壊し、一族の内紛に発展したと伝える。この事件の現場の可能性があるという。

 石舞台の東約100メートルで、少し高い場所にある棚田を発掘し見つけた。柱列は2つで長い方は9メートル以上。どちらも1.7メートル間隔で一辺50センチの穴があり、直径15―25センチの柱を立てたらしい。

 掘っ立て柱建物2棟の遺構と考えられるが、調査地が幅2メートルしかなく、同研究所は建物と断定できないとしている。

 別に一辺1.6―1.8メートルの大きな穴が2つ見つかり、直径30センチの柱を立てた跡があった。穴は深さが1.5―1.8メートルもあり、建物の柱とは考えにくいという。

 欽明天皇(生年不明―571年)の墓を620年に補修した際、各氏族ごとに大きな柱を立て、力を競ったという記事が書紀にあり、同研究所は「石舞台も蘇我の各支族が同様の大柱を立て、覇を競った可能性がある」としている。

 一帯は馬子の邸宅があったとされる島庄(しまのしょう)遺跡。石舞台の西約200メートルで、馬子が住んだ正殿とみられる大型建物の跡が見つかっている。

 現地説明会は11日午前10時から。

境部臣摩理勢は、蘇我馬子の弟という説が有力ですが、遠山美都男先生の本(聖徳太子はなぜ天皇になれなかったのか )では、蘇我稲目の弟ではないかと述べられています。

しかし、蘇我氏って不思議な氏族です。稲目の時代に急に現れて、天皇との血縁関係を結んでいきます。新興貴族がなぜあれだけの権力を握れたのかは、興味あるテーマです。

聖徳太子はなぜ天皇になれなかったのか
遠山 美都男〔著〕
角川書店 (2000.10)
通常2-3日以内に発送します。
聖徳太子未完の大王
遠山 美都男著
日本放送出版協会 (1997.12)
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