折に触れて、仏典を読んて気づいたことを書いていきます。
ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも汚れた心で話したり行ったりするならば、苦しみはその人につき従う。──車をひく(牛)の足跡に車輪がついて行くように。
ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、福楽はその人につき従う。──影がそのからだから離れないように。
ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)
より
ゴータマ・ブッダ (講談社学術文庫) でも同様の文章あり。
これは、『ダンマパダ』といわれている原始仏典です。釈尊が説いた言葉に非常に近いと言われている仏典です。この句は仏教の本質をあらわしていると思います。仏教の教えは、「心」を非常に重視していると感じます。心を清浄にすることが仏教の一つの目標なのでしょう。このことは、個々人の心の中に仏があるという思想につながっていると思います。唯識思想などが出てくるのも、仏教のこのような根本思想があるからではないでしょうか。
心に関しては「ダンマパダ」にこんな言葉もありますねぇ。
心は、動揺し、ざわめき、護り難く、制し難い。英知ある人はこれを直くする。──弓矢職人が矢柄を直くするように。
心は、捉え難く、軽々とざわめき、欲するままにおもむく。その心をおさめることは善いことである。心をおさめたならば、安楽をもたらす。
心は、極めて見難く、極めて微妙であり、欲するがままにおもむく。英知ある人は心を守れかし。心を守ったならば、安楽をもたらす。
ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)より
至言です。まさに、心は制御しがたいものです。欲するがままに動こうとします。
毎朝、電車で通勤しているのですが、満員の時間帯に乗るのは嫌なんですよね。人々の心がトゲトゲしているのがよく分かります。自分の心も、ついイライラしてしまっているときがあります。そんなときは、この句を思い出すようにしています。この物質文明の時代、はたして、文明が進んで人々は「弓や職人が矢柄を直くするように」心を制御できるようになってきているのでしょうか。そんなことを感じることができない社会的事件が続いているのが悲しいです。
早島 鏡正
講談社
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